Happy Birthday
その文字を見た瞬間、彼女のストーリーが頭の中を駆け巡り目頭が一気に熱くなった。
大学時代、アメリカに留学していたときの話。
メキシコ人のルームメイトと出会えたことは留学で得たとっておきの財産だった。
彼女は5人兄弟の3番目。ご両親は中学校卒業とともにメキシコからアメリカに渡り働き始めたそうで、スペイン語は話せるが、英語の読み書きができない。どれほど教育が大切か感じるからこそ、5人の子どもたちはどうしても大学まで行かせてあげたいと朝から晩まで働いた。英語を習ったことのないご両親に、5人の子どもたちが学校で習ったことを代わる代わる教えていたそう。教育を通して感謝と尊敬を伝える彼女の家族のストーリーは、感謝を忘れ、勉強を”やらなくてはいけないもの”にしていた私の乾いたこころを劇的に変えてくれた。
留学中に迎えたわたしの23歳の誕生日。まだその時会ったことがなかったのに、彼女の家族全員が1枚のカードにメッセージを書いてくれた。5人の兄弟からのあたたかいことば、そしてお父さん、お母さんが1行ずつHappy Birthday。
小さくも力強く、でもあたたかい二人の文字。多くの表情と想いが伝わってくる。移民として経験してきた数々の試練、必死の思いで子どもたちを育て上げた彼らの愛と忍耐、その子どもたちに習って書いてくれたひとことに全ての歴史が詰まっていた。これほどこのことばを宝箱にそのまま入れて持って帰りたいと思ったことはない。
忘れられない特別な誕生日。